FIELD NOTES: 恐れを超えるパドルへの挑戦

一見すると、ジェイコブ・ヴェンディッティは他のウォーターマンと変わらないように見えるでしょう。鍛えられた体、集中力、そして常に海の中かその近くにいる。しかしその内側では、彼にしか見えない闘いが続いています。ジェイコブは嚢胞性線維症という、肺と消化器系を攻撃するまれな遺伝性疾患とともに生きており、呼吸一つひとつが意識的な努力を必要とします。現在、彼の肺活量はわずか30%。それでも彼は、大西洋を80マイル横断するパドル挑戦のためにトレーニングを続けています。

この6月、ジェイコブはCrossing for Cystic Fibrosisという過酷な耐久パドルイベントで、バハマのビミニ島からフロリダ州レイクワースビーチまでのリレーチームを率います。最も健康なアスリートでも難しい偉業ですが、ジェイコブにとってはもっと深い意味を持ちます。それは、逆境に屈しない意志の表れであり、自身の人生を形作ってきた病気に対する静かな反抗でもあるのです。

「見た目には健康そうに見えるかもしれませんが、実は常に呼吸との戦いです」とジェイコブは言います。「CF(嚢胞性線維症)は見えない病気です。毎日の治療、疲労、痛み…でも、海に入ると少し呼吸が楽になります。海は平穏をくれるし、自分を奮い立たせてくれるんです。」
ジェイコブは一人でパドルしているわけではありません。彼はLive Fearlessly Foundationという非営利団体の創設者でもあります。何度も入院を繰り返し、死に直面した経験の中から生まれたこの団体は、CFやその他の希少疾患を持つ人々を勇気づけるために設立されました。「どんなに制限のある人生でも、それは生きる価値がある」という信念のもとに活動しています。
「自分の苦しみを無駄にしたくなかったんです」とジェイコブは語ります。「Live Fearlessly は、自分の存在をポジティブな形で残す方法なんです。どんな状況でも、人は意味のある人生を送れると伝えたかった。」

彼のマインドセットは多くの人々に響いています。CF患者であり、肺移植を受けた後にアイアンマンにも挑戦したスコット・ジョンソン、そしてPiper’s Angels Foundation創設者のトラヴィス・スーツといった戦士たちに影響を受け、今ではジェイコブ自身もその一員に加わろうとしています。彼がThe Crossingに挑むという決断自体が、「CFを持つ人間でも並外れた挑戦は可能だ」という証です。
FLORENCEは、彼とチームが機材の心配をせずにパドルに集中できるように、必要なギアを提供しました。ミッドナイトから始まるこのパドルは、夜から朝にかけての時間帯に、温かい海水、強い日差し、そして予測不能な海洋気象という過酷な条件と向き合うものです。
「フローレンスのギアを着ることで、本当に力をもらえました」と彼は語ります。「自信を持てるんです。まるで無敵になったような気分です。」

Crossing終了後、ジェイコブは両肺移植という命を救う大手術に備える予定です。この手術は、身体的にも精神的にも、そして経済的にも非常に大きな負担を伴います。水上での一漕ぎ一漕ぎが、彼が闘っているものの象徴なのです。それは単なる生存ではなく、「未来のため」の闘いなのです。Crossingと彼の財団を通じて、彼は移植費用や医療費の支援を募り、同時に認知を広げています。
「前に進み続けるために、できることは全てやっています」とジェイコブは言います。「移植手術の準備をしながらパドルのトレーニングをするのは本当に大変です。でも、これは自分ひとりのためじゃない。他の人たちに可能性を見せることができるなら、それが全てなんです。」
「僕が海の上で漕いでいる姿を見た人が、『諦めなければ何でも可能だ』と感じてくれたら嬉しい。
このパドルは、肉体的・精神的・感情的な限界を突破する挑戦です。もし、どんなに困難な状況でも人々が“恐れずに生きる”ことを後押しできたなら、それ以上に望むことはありません。」
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