FIELD NOTES: ネッド・ハートと振り返る『FROSTBITE』制作の舞台裏

北大西洋の荒々しい風にさらされた孤独な海岸で、凍てつく波と一瞬で変わる天気の中、一本のサーフフィルムが静かに生まれた。FROSTBITE は、テストパイロットであるネッド・ハートがアイルランドとスコットランドの海岸でヘビーウォーターを追いかけた即興的な旅を記録した作品だ。友人同士の自由な冒険として始まった旅は、ネッドと映像作家オスカー・ジェームズの両者にとって転機となるプロジェクトとなった。

「最初はまったく期待していなかったし、映画を作るつもりもなかった」とオスカーは語る。「ただ撮影したかっただけ。」だが、セッションを重ねるごとに、彼らは手応えを感じ始めた。「本気で集中すれば、本当にユニークな作品が作れると思ったんだ。」

The Cold & The Chaos

スコットランドの荒天をくぐり抜けて育ったオスカーにとって、このような環境は特別ではない。だが今回の旅では、水中での撮影がこれまでにないほど彼を試した。「映画の冒頭にあるスラブ（波）セッションのとき」と彼は振り返る。「15フィートを超える波が押し寄せて、チャンネルが崩壊して崖まで届くセットが来ていた。巨大な波を逃れようとしたときにスキーから投げ出された。あの日は泳ぎたくなかったけど、泳いだ。そして、これまでで最高の映像を撮ることができた。あの泳ぎこそが、FROSTBITE を象徴しているんだ。」

「あのサイズの波の中を、カメラを持ったまま本気で泳いだのは初めてだった。全身が『やめろ』と叫んでいたけど、やらなければ絶対に後悔すると思った。」

オスカーはその混沌をレンズ越しに捉え、記録した。その中から、作品の核となる映像が生まれた。それは単に壮大だからではなく、努力の末に手に入れたものだったからだ。すべてのカットに恐怖とアドレナリン、そして北大西洋の冷たい波への敬意が詰まっている。

あの泳ぎが、すべてを変えた。直感と芸術だけで乗り越えた体験だった。「この制作過程全体が、僕を精神的にも肉体的にも限界まで、いやそれ以上に押し上げてくれた。」

ネッドにとっても、FROSTBITE は大きな転機だった。渡航直前にかかとの骨を折り、「歩くこともできず、飛行機に乗れるまで1週間延期した」という。「怪我と常に闘っていたけれど、実際にきつかったのはメンタル面だった。治るのか悪化するのか分からないまま、あの波に挑戦したいという気持ちだけは変わらなかった。」

ネッドは西オーストラリア出身で、ヘビーウォーターに慣れ親しんできた。冷たいスラブ、予測不能なリーフ、激しいワイプアウト。それでも北大西洋は別物だった。サイズや危険度だけではない。風の冷たさ、空の緊張感、空気そのものが違っていた。「ああいう波には、スリルがある。最初は恐ろしいけど、乗り切ったときの達成感は深く刺さる。」

旅の終盤、彼は限界まで試されたセッションを迎える。何度も波に叩かれ、仲間たちは海から上がっていった。残ったのは彼一人。満身創痍、でも諦めずにラインナップで波を待った。

「一本、狙ったんだ」と彼は語る。「完璧なテイクオフではなかった。でも空中からドロップして、ラインを保ち、スラブを最後まで乗り切った。」

「あれが、その一本だった。あの波が、すべてだった。」

ネッドとオスカーは旅の直前に出会い、やることはシンプルだった。ネッドは波に乗り、オスカーは撮る。無駄を削ぎ落とし、海の流れに身を委ねた。「大きな計画はなかった。ただ、やるべきことをやっただけ。」

FROSTBITE は、ネッド自身による“スラブツアー”とも言えるものだった。インスピレーションの源はネイサン・フローレンス。世界中の僻地で過酷な波に挑む彼の姿勢が、この旅の青写真となった。「ネイサンはまるで謎。どこにでもいて、どんな難所でもやり遂げる。彼を見ていると、僕もその道を歩みたいと思うんだ。」

でも、あの波を追うには準備が必要だ。体力だけでなく、精神力、そして厳しい自然環境に耐えられるギアも必要になる。

「まず最初にやられるのは自然の力だ」と彼は言う。「外に出れば、風も雨も寒さも、すべてが突き刺さる。あのギアがあったからこそ体温を守れたし、集中力を保てたんだ。」

そして自然は本当に厳しかった。「ネイサンとFLORENCEには本当に感謝してる。世界でもっとも過酷で恐ろしい波を追う道を開いてくれた。」

「この2つは最高のコンビだった」と彼が語るのは、Pertex®製のダウンパファーと5/3mmフード付きウェットスーツについて。「風の冷たさが異常だったけど、このギアが熱を保ち、天候を寄せ付けなかった。ああいう極限環境に行く人には、本当におすすめしたい。」

ネッドが実際に使ったギアを見る

FROSTBITE は現在、一部のフィルムフェスティバルで上映中。年内にはオンライン配信も予定されています。